日本酒は、古くから日本の文化に深く根付いている伝統的なアルコール飲料であり、その製造法や味わいは地域や製造者によって異なります。しかし、その多様性を理解するためには、まず日本酒がどのように定義されるのかを知ることが重要です。
日本酒とは何か?
日本酒は、米を原料として使用していること、こしていることが法律で定められた条件です。また酒税法では「清酒」と表記されており、「米、米こうじ、水を原料として発酵させてこしたもの」「米、米こうじ、水及び、清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させてこしたもの」と定義されています。みなさんのよく見る「日本酒」という名前は、清酒の中でも原料である米、米麹に日本国内の米のみを使用し、さらに日本国内で醸造したもののみを指します。

海外のお米を使ったり、日本以外で製造すると日本酒と表記できないんだね。
日本酒の主な原料
日本酒の原料は主に以下の3つです。
1.米
日本酒の基礎となる重要な成分です。酒米と呼ばれる特別に育てられた米が使用され、デンプンの含有量が高く、精米歩合(外側の糠を削った割合)が重要です。精米歩合が低いほど、より純粋で高品質な日本酒が作られます。
2.水
日本酒に使用される水は、酒の風味に大きな影響を与えます。特に、ミネラル成分が豊富で柔らかい水が好まれ、地域ごとの水質によって日本酒の味わいも異なります。例えば、京都の水は軟水であり、すっきりとした味わいを持つ日本酒が多く製造されます。一方、山形の水は硬水で、しっかりとしたコクが感じられる日本酒が特徴です。
3.米麹
米を蒸してから、麹菌を加え発酵させたものです。麹菌が米のデンプンを糖化させ、その後酵母が糖分をアルコールに変えます。この工程が日本酒の甘さや香りを生み出す要因となります。米麹の選び方や使用量も、最終的な味わいに大きく影響します。

その他にも、政令で定める物品として、醸造アルコールやブドウ糖などを米の重量の50%まで併用することができるよ。
日本酒の製造プロセス
日本酒の製造は、以下のようなプロセスで進行します。
1.洗米と浸漬
まず、米を洗い、適切な時間水に浸して水分を含ませます。この過程は、米が蒸す際に均等に熱が通るために重要です。
2.蒸米
浸した米を蒸し、蒸米を作ります。この蒸米が、後の麹作りに使用されます。
3.麹作り
蒸米に麹菌を加え、適切な温度と湿度で数日間発酵させます。この段階で米のデンプンが糖に変わります。麹作りは非常に繊細な工程であり、温度管理や湿度の調整が重要です。経験豊富な蔵人がこのプロセスを担当することが多く、彼らの技術が酒の品質を決定づけます。
4.酒母作り
麹、酵母、水を混ぜて酒母を作ります。これは日本酒の発酵のスタート地点です。この酒母が元となって、後の本発酵が行われます。
5.発酵(醪造り)
酒母にさらに米、麹、水を加え、本発酵(醪造り)を行います。この工程は数週間かかり、ここでアルコールが生成されます。本発酵の期間中、温度や湿度を厳密に管理することが重要です。温度が高すぎると酵母が死んでしまい、低すぎると発酵が進まなくなります。
6.上槽(搾り)
発酵が終わったら、酒を搾って液体(酒)と固体(粕)に分けます。この固体は「酒粕」と呼ばれ、料理やスイーツに使われます。酒粕は栄養価が高く、最近では健康食品としても注目されています。

こされた酒は、その後、滓引き、加熱処理、加水、貯蔵など複数の工程を経て出荷されていくよ。とっても手間がかかっているね。
日本酒の種類
日本酒はその製造方法や米の種類、精米歩合によって、さまざまな種類に分けられます。以下に代表的な日本酒の種類を紹介します。
1.純米酒
米、米麹、水のみで作られる日本酒です。米の味わいがしっかりと感じられるのが特徴で、濃厚な風味があります。
2.吟醸酒
高精米歩合の米を使い、低温でゆっくりと発酵させたものです。吟醸酒とは精米歩合は60%以下で作られた日本酒を指すが、50%以下になると大吟醸と呼ぶことができます。香りが高く、フルーティーな味わいが特徴で、繊細さがあります。
3.本醸造酒
精米歩合が70%以下の米と米麹に醸造アルコールを加えて作られたもの。すっきりとした飲み口が特徴です。飲みやすく、食事と合わせるのに最適です。
4.普通酒
醸造アルコールを11%以上使用したものや、甘味料などの添加物を加えたものを指します。日本酒全体の約7割をしめています。手頃な価格で楽しめるのが魅力です。
6.生酒
加熱処理を行わない日本酒で、フレッシュな味わいが楽しめます。生酒は特に新鮮さが重要で、早めに消費することが推奨されます。生酒には、瓶詰前に火入れをしない「生詰酒」、搾った直後は加熱処理を行わず、一定期間冷蔵庫で保存した後に瓶詰めの際に火入れを行う「生貯蔵酒」もあります。
7.にごり酒
ろ過が不十分な日本酒で、白濁した外観が特徴です。甘みとコクがあり、飲みごたえがあります。にごり酒は、特にクリーミーな口当たりが人気です。

原料や製造方法が一定の基準をみたすと「特定名称酒」を名乗ることができるよ。
日本酒の文化的背景
日本酒は、古代から日本人の生活に欠かせない存在でした。祭りや祝い事、さらには日常的な食事にも欠かせない飲み物として、地域ごとに独自の製法が発展しました。また、日本酒はその地域の気候や風土、文化を反映しているため、各地の日本酒にはその土地ならではの個性があります。
特に、最近では日本酒の国際的な人気が高まり、海外でもその魅力が注目されています。日本酒を使ったカクテルや料理とのペアリングが進められる中で、新しい楽しみ方が広がっています。日本酒の飲み方や食事との相性は無限であり、ワインのようにさまざまな料理と合わせることができます。例えば、吟醸酒は刺身や寿司と相性が良く、純米酒は煮物や揚げ物に合います。特に、地元の日本酒を地元の料理と一緒に楽しむことは、地域の文化を体験する素晴らしい方法です。
さらに、日本酒のテイスティングイベントや酒蔵見学が増えており、消費者が直接蔵元と触れ合う機会が増えています。このようなイベントは、消費者が日本酒に対する理解を深めるだけでなく、蔵元にとっても新たなファンを獲得する貴重な場となっています。
まとめ
日本酒は、その豊かな歴史と文化を背景に、多様な製法やスタイルが存在する飲み物です。日本酒の定義を理解することは、その奥深い世界を楽しむための第一歩です。ぜひ、さまざまな日本酒を試してみて、自分好みの一杯を見つけてください。
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